思春期の子どもたちの専門家、くればやしです。
ついつい叱りたくなってしまう、そんなお母さんはいらっしゃいませんか?
僕らはたくさんの常識の中で生きています。
その常識から外れた言動を目にしたとき、僕らはついつい叱りたくなります。
でも、その常識、本当に常識なのでしょうか?
上海は子育て家庭に優しい街
我が家は、3人の子どもたちを連れての海外赴任でした。
次男くんは、生後半年です。
大量の予防接種を受けて、いざ異国の地へと向かいました。
冬のあす朝、次男を抱っこして歩いていると、知らないおばさんに手を引っ張られました。
なにやら次男を指差し、やたら怒ってくるのです。
でも、僕には何を言っているのか、さっぱりわかりません。
覚えたての中国語
「聴不懂(わかんないよ〜)」
を何度もつぶやき、立ち去りました。
すると、僕の腕を捕まえて、さらにすごい剣幕で怒るのです。
もう、わけがわかりません。
おばさんは、次男のズボンをひっぱると、「これを見ろ」と言います。
おばさんの言いたかったことがようやく理解できました。
抱っこをしていると、どうしてもズボンが引っ張れてしまい、靴下とズボンの隙間から肌が露出してしまいます。
そのことを、おばさんは真剣に怒っていたのです。
他人の子とか自分の子という垣根はありません。
みんなでみんなを育てている。
そんな意識があるのですね。
なかなかそういうことって、日本では起こりません。
見て見ぬふりは多いですが。
日本がいいか。
中国がいいか。
そんなことを書きたいわけじゃないの。
どちらが「良い」とか「悪い」とか。
そういうことじゃなくてね。
ただね、上海での暮らしは、僕の価値観を大きく変えてくれました。
赤ちゃんがいると必ず座れるの
上海の地下鉄は大変混雑しています。
その日も次男を抱っこして、地下鉄に乗っていました。
たったの1駅です。
僕は扉にもたれて立っていました。
すると遠くの方から、若者が手を振ってやってきます。
明らかに僕を見ています。
(だれだ?学校の中国人スタッフかな?)と思いました。
しかし、まったく知らぬ顔です。
その若者ね、「あそこに座れ!」と言って指を指すんです。
いや…、あなた、それ隣の車輌ですよ…。
なにせたったの1駅です。
もうすぐ着くのです。
混雑した車内を移動するよりも、その場にいた方が楽チンです。
「いや…、次の駅で降りるから」
と言うのですが、しつこく「こっちへ来い」「座れ」と言います。
そのうち、怒りだします。
と、そうこうしているうちに駅に到着しました。
何度も頭を下げて地下鉄を降りました。
若者はとっても不服そうで、申し訳ない気持ちになりました。
赤ちゃんを抱っこして地下鉄に乗ると必ず座らされます。
以来、座らないと叱られるので、僕は遠慮せずに1駅でも座ることにしていました。
一方、日本に帰国して地下鉄に乗ると、異様な感じがしました。
し〜んと静まり返った車内。
おしゃべりをしてはいけない空気と言いましょうか。
上海で暮らしてきた我が家の3兄弟は、電車の中でも自由です。
上海の地下鉄では、みんな大声でしゃべっているし、携帯電話でしゃべっている人もたくさんいます。
歌を歌う物乞いの人もいます…。
まぁ、なんともにぎやかな車内なんです。
そこに慣れ親しんできましたからね。
ついつい騒がしくしてしまいます。
なんどもなんども「静かにしなさい」と言わねばなりませんでした。
赤ちゃんはファストパス
どこのお店に行っても、赤ちゃんを連れているだけで優先案内されます。
長蛇の列なのに、一気に追い抜きます。
まさにファストパスです。
黙って並んでいても、必ずお客さんのだれかが気づいてくれて、店員さんに「あそこ、赤ちゃんいるんだから先に案内してやれ」みたいなことを言ってくださいます。
おかげで、我が家は並んでレストランに入ってことがありません。
また、おもしろいのはレストランでは必ず誘拐されます(笑)
店員さんが抱っこして連れていってしまいます。
中国のレストランはやたら店員が多いので、赤ちゃんを抱っこした店員は「抱っこ」が仕事になります。
一切注文すら取りに来ません(笑)
ちなみに、次男くんが初めて食べた離乳食はきゅうりです。
中国人の店員さんに食べさせられてました(笑)
「カッパ!カッパ!」って…おい!
海外で生野菜を食べさせられる。
もはや事件です。
あまりにもおもしろい展開に爆笑でしたけれど。
それでね、あるお店に行ったときのこと。
店員さんだけでなく、そのうち厨房から料理人も出てきて一緒に写真を撮っています。
「すいませ〜ん」
呼んでもだれも来ません。
「今、忙しい」
いやいや…、働けよ。
料理も出てきません。
だって、厨房に人がいないんだもん。
次男くんが赤ちゃんだったとき、我が家はレストランで困ることは一つもありませんでした。
初めての離乳食が「きゅうり」だったということ以外はね。
上海って子育てに優しい街なんです。
でもね、いいことばかりじゃありません。
赴任した最初の冬、僕はバスにひかれました。
曲がってきたバスの内輪差に巻き込まれる形で、バスにぶつかりました。
幸いにも、ダウンジャケットを着ていたため、跳ね飛ばされただけで済みました。
次男くんを抱っこしていましたので、咄嗟に身体をひねってバスとの接触は避けられました。
本当に肝を冷やしました。
もしもベビーカーであったら、大変なことになっていたと思います。
が、バスはそのまま行ってしまいました。
公営バスです…。
ひき逃げです。(笑)
そう、ここは海外。
自分の身は自分の身で守らねばなりません。
それ以来、我が家はとりわけ交差点を渡るのには、気をつけました。
信号は赤は止まれ、青は進めが常識です。
上海では、赤だろうが青だろうが、行けるときは進めだし、行けないときは止まれです。
赴任して半年ぐらいは、怖くて上手に交差点が渡れませんでしたから。
「いつ渡っていいんだ〜」って悩んでいましたからね。
ついつい叱ってしまうときは
「こうでなければならない」
そんな恐れの選択を手放したとき、本当に子どもたちに伝えたいことが見えてくると思うのです。
ついつい叱ってしまうのはね、
「こうでなければならない」
そんな常識が、あなたを急かすからなの。
親として、叱らなければならないって思ってしまう。
それを悪いとは言いません。
「躾」という意味では、暮らす世界の社会通念に照らし合わせて、ときに叱ることもあるでしょう。
それは否定しません。
でもね、叱りたくなったら、一度深呼吸をして自分に問いかけていただきたいのです。
ついついガミガミ叱りたくなったらね、立ち止まっていただきたいのです。
なんで叱りたいんだろう?
この常識って、世界のスタンダードかな?
問いかけるだけでいいんです。
それだけで、言葉が変わりますから。
それだけで、お母さんと子どもたちの関係ってガラリと変わりますから。
魔法の質問
あなたが信じている常識は、この世界のスタンダードですか?
どんな言葉や行動で、子どもを喜ばせますか?
本当に大切にしたいことは何ですか?