子どもの心は驚くほど繊細です。
とりわけ、思春期の心は壊れやすいものです。
そんな思春期の子どもが、「学校に行きたくない」と口にしたら、どうされますか?
「◯◯◯」がアーチを描いて飛んでった♪
僕には、忘れられない思い出があります。
あれは、小学3年生のときでした。
その日は、たまたま担任の先生はお休み。
やってきたのは、図工を担当する女性の先生です。
先生はおっしゃいました。
「時間が余ったので、似顔絵を書いてあげるよ」
僕らは喜びました。
絵の得意な図工の先生が自分の顔を描いてくれると言うのです。
どれほどうれしかったことでしょう。
僕らは、先生の机の前に列をなして並びました。
次々と描き上げていく先生。
その絵を片手に、嬉々とした表情で自慢する級友たち。
自分の順番が回ってくるのを、今か今かと待っていました。
そして、ようやく僕の順番が回ってきました。
先生はすぐに描き始めました。
正直言うと、「あれ?あんまり似てないな」と思いました。
それがなんだかおかしくて、「プッ!」と吹き出してしまいました。
すると僕の鼻の穴から「鼻くそ」が飛び出したのです。
「鼻くそ」は見事なアーチを描いて、先生の机の上にポトリと落ちました。
次の瞬間です。
先生は金切り声を上げて怒鳴りました。
「汚い子ね!早く片付けて!」
汚い子…。
汚い子…。
汚い子…。
どれほど悲しかったことでしょう。
教室の空気は一変しました。
さっきまで楽しげな雰囲気だった教室が、突然重苦しい雰囲気になったのです。
僕は急いで自分のランドセルからティッシュを取り出すと、先生の机を拭いました。
先生は、続けます。
「ほら、まだ汚いでしょ?早くきれいにして」
僕は、新しいティッシュを取り出すと、さらに拭きました。
情けなさと恥ずかしさで、僕の顔は真っ赤になりました。
すると、目からは涙がポロポロとこぼれてきたのです。
ようやく拭き終わると、僕は黙って自分の座席に戻りました。
うつむいたまま、涙を拭いました。
恥ずかしくて、周りと目を合わせることすらできません。
すると、先生はさらに言うのです。
「ちょっと!
人に迷惑をかけておいて、何も言わずに戻るの?
ちゃんと謝りなさい」
僕は先生に謝りました。
何を謝っていいのか、よくわからなかったけれど。
そんな僕に、不服そうな顔をして先生は尋ねました。
「それで、描くの?描かないの?」
僕は消え入りそうな声で、「もういいです…」と言いました。
「描いてください」なんて、言えるわけがありません。
「あっ、そう。じゃあどいて。
はい、次の子。
待たせてごめんね」
級友の冷たい視線を背中に感じながら、僕は自分の座席に腰を下ろしました。
ただ一人、似顔絵のない僕の机。
机の上をじっと見つめて、その時間を過ごしました。
今でも、思い出すだけで悲しくなります。
どれほど傷ついたことでしょうか。
その先生は、そんな気持ちにすら気づいていないのです。
それもまた、悲しいことでした。
思春期はね、身体は大人、心は子ども♪
生きていれば出会うであろう心ない言葉や行動。
大人であれば割り切ることもできるでしょう。
「まあいいや」って思うこともできるでしょう。
でも、子どもたちにとっては違います。
どんな小さな引っ掻き傷も、子どもの心に深い傷跡を残すには十分です。
思春期の子どもたち。
彼らの身体は、大人です。
彼らの心は、子どもです。
身体と心が乖離していることを、まず知っていただきたいのです。
身体が大きくなり、見た目も大人びてくる。
話すことも一人前になってくる。
だから、ついつい大人扱いしてしまう。
でもね、心だけは子どものままなのです。
心の耐久性は、小学生も中学生も変わりません。
とても脆くて、繊細なのです。
人間が抱える悩みの多くは、人間関係に起因するもの。
他者と接したり比較したりする中で、傷ついたり傷つけたり。
そうやって、僕らはだんだん大人になっていくのですね。
無人島にたった一人で生きているのであれば、私たちの悩みは「食べるもの」だけなのですから。
まして、多くの人間が暮らしている学校です。
意識的に、もしくは無意識のうちに、傷つけたり傷つけられたりする場面は多くあります。
この記事でお届けしたいこと
もしも我が子が「学校に行きたくない」と言ったら。
まず、話を聴いてあげてください。
「そんなこと、気にしすぎ」などと言わず。
子どもの声に耳を傾けていただきたいのです。
決してジャッジすることなく、助言をするでもなく。
とは言え、ついつい助言がしたくなるものですよね。
「大丈夫よ。学校に行きなさいよ」と言いたくなります。
でもね、その言葉は大人の意図とは違った形で届いてしまうものです。
「何もわかってくれないんだな…」
そんなふうに感じてしまうかもしれません。
それは、とても恐いこと。
「学校に行きたくない」という言葉は、大変勇気のいる言葉です。
その言葉を発する前には、大きな葛藤があったはずなのです。
その勇気を受け止めてあげていただきたいのです。
聴いてもらえるだけで、子どもたちの心は休まります。
場合によっては、お休みをするのもいいでしょう。
だって、風邪をひいて学校を休むこともあるでしょう?
心が風邪をひいたのだと考えてみてください。
大きな病になるまえに、少しだけ心を休ませてあげる。
それだって、この子にとって大切な時間です。
魔法の質問
傷ついた心を癒すためにできることは何ですか?