保護者からのSOS。
思春期の子どもの専門家として、いくつも出会ってきました。
思春期の子どもが抱える課題を解決するためにすべきことは、親と子の関係性を整えることでした。
我が子が部屋から出てこない⁉︎
「部屋から出てきません」と、保護者からSOSをもらうことがありました。
不思議なんですが、そういうご家庭は部屋に鍵がついているんですね。
一人だけ、トイレから出てこないというパターンもありましたが。
そんなとき、このようなお電話をいただくことがありました。
「学校に行きたくない」と言っています.
学校が悪いから、部屋から出てこないんですよ。
それは、真実なのでしょうか。
なぜこの子は、学校との間ではなく、自分の部屋とリビングとの間に壁を作ったのか。
本当はそこが大事なのだと思います。
僕が家庭に伺うと、子どもたちは籠城を止めて、顔を出します。
これもまた、不思議で仕方がありませんでした。
僕はこれまで、子どもに会いに行って門前払いされたことはありません。
ですから、本当に学校が悪いからなのか、僕にはわかりませんでした。
「今日は、どうする?休む?行く?」
そう尋ねると、子どもたちは「学校に行くか」「学校に行かないか」の選択をします。
あとは、応援するだけです。
「学校に行く」という選択をすれば、「お母さん、一緒に学校に行きますね」と言って連れていきます。
「学校に行かない」という選択をすれば、「お母さん、今日は休ませてあげてください」とお願いをします。
ただそれだけです。
特別なことは、何もありません。
でも、そんな程度のことで、思春期の子どもが抱える課題を解決できるのです。
ある朝、いなくなっちゃった子の話
ですが、お家からは何の連絡もありません。
そんなとき、「学校の先生」はお家に電話を入れます。
ある日のこと。
男の子が一人、お休みをしていました。
ですが、ご家庭からは、何の連絡もありません。
家に電話をしました。
ところが、です。
「朝、普通に出て行きました」
お母さんは、そうおっしゃるのです。
待てど暮らせど、彼はやってきません。
朝、家を出てから2時間ほど過ぎたころでしょうか。
いよいよ大事(おおごと)になってきました。
お母さんには、「自宅周辺を探してください」とお願いしました。
学校職員は、学校周辺を手分けして探します。
僕はバイクにまたがると、彼が通学路として通りそうなルートを走りました
さらに、彼の行動範囲で立ち寄れそうな公園やコンビニ、それに本屋さん。
とにかく走り回ったのだけれど、どこを探しても見つかりません。
背中に嫌な汗を感じながら、探し続けました。
1時間ほど、探したころでしょうか。
(とりあえず、一度学校に戻ろう。その前に、家庭訪問だけしよう)
そう考え、彼の自宅に向かいました。
自宅の前でバイクを停めました。
ヘルメットを外して顔を上げてみて、驚きました。
自宅のお隣は病院の駐車場になっていました。
停めてある車の陰に、地面に腰をかけて背中を丸めている制服姿を見つけたのです。
「お〜い!◯◯くん!」
僕が声をかけると、彼は驚いた表情で振り返りました。
「あっ…、先生…」
ヘルメットをハンドルにかけ、歩み寄りました。
「ここにいたのか〜。どうしたの?」
彼は恐る恐る口を開きました。
「あの…、道に迷いました」
ところがです。
お母さんは言いました。
「道に迷いました」と言う彼に
「そんなわけないでしょ!バカなことを言うんじゃないの。どれだけ心配したと思ってるの。謝りなさい」
そうおっしゃるのです。
もちろん、僕だって(そんなわけないでしょ)とは思います。
でもね、それを今、この子に届ける必要などないのです。
「まあまあ、お母さん。一緒に学校でゆっくりお話を聞きましょう。
とだけ伝えました。
親と子の関係性を整えること
テストが不安だったのか、提出物が出せなかったのか。
もう理由は忘れてしまいました。
たぶん、覚えていないほど、些細な理由でした。
ただ、あのときの顔だけが忘れられません。
家に帰ることもできず、学校に行くこともできず。
僕が声をかけた瞬間の驚きと喜びが混在したような顔です。
「そうなんだね」
まず、受け止める。
子どもたちは、いろんなものを抱えて生きています。
そこ「良い」も「悪い」もありません。
ジャッジする必要などないのです。
その子の想いを受け止める。
その子の選択を応援する。
戦えば、子どもたちは籠城するかもしれません。
どこかに、いなくなるかもしれません。
そのことの方が苦しいのですよ、親も子も。
まずは、親と子の関係性は整えておくこと。
家庭は子どものプラットフォームなのですから。
魔法の質問
- この子はどんな選択をしていますか?
- その選択を知って、あなたはどんな気持ちになりましたか?
- その気持ちを手放す、はじめの一歩は何ですか?