子どもが学校に息苦しそうにしているときにする魔法の質問
思春期の子どもたちの専門家、くればやしです。
学校という場所には「こうでなければならない」がたくさん存在します。
そういうことに息苦しさを感じている子どもたち、きっといることと思います。
その息苦しさを知っていただくだけで、救われる子もいるのです。
「教育」ってなんだろう?
日本と中国では、教育についての考え方が大きく異なるように感じました。
僕は文部科学省派遣教員として3年間上海日本人学校で志事をしてきました。
上海には日系幼稚園と現地系幼稚園があります。
日系幼稚園は、日本式のきちんとした教育。
「きちんとした」はジャッジですね。
換言すると、日本人好みの教育が行われています。
その違いが如実に現れるのが日本人学校の入学式です。
体育館の椅子は小学1年生用の小さなものです。
ですが、幼稚園や保育園を卒業したばかりの子どもたちの身体には、どうしても大きいのです。
座ると、足が床に届きません。
ぶらんぶらんしてしまいます。
それでね、入学式。
海外日本人学校は、祝辞と式辞がどうしても長くなります。
校長に、運営委員長に、領事に、商工会議所の方に…。
来賓紹介もすごい人数です。
すると、だんだん子どもたちは飽きてきます。
足をぶらんぶらんさせ始めます。
どんどんパワーアップしてきます。
子どもたちも楽しくなってしまい、周りの子と目配せをしながら、ぶらんぶらんが加速します。
ぶらんぶらん!
ぶらんぶらん!!
ぶらんぶらん!!!
ですが、その中で足をぶらぶらさせない子どもたちがいます。
日系幼稚園の子どもたちです。
とりわけ厳しく育てられてきた子どもたちは微動だにしません。
じっと前を見据えよく話を聞いています。
そして、元気よく返事をします。
「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます」
そう来賓の方がおっしゃると、声を揃えてこう答えます。
「ありがと〜ございます」
きれいに声が揃うのですね。
どこかで集まって練習してきたのでしょうか。
「よく教育されている」
そんな言葉で高く評価されます。
おもしろいなぁと思って眺めていました。
どちらが優れているというお話をしたいわけではありません。
少なくとも、学校においては「足をぶらんぶらんさせないこと」が、しっかり教育されていると評価されます。
「何を大切にするか」
それは人それぞれですね。
教育ってなんだろうね?って思うわけです。
ある日系企業の廊下で見つけたスピード制限
中国には、たくさんの日系企業があります。
ある企業を訪問したときの話です。
パソコンのプリンターをつくる企業に伺いました。
大きな工場の廊下に、ビニールテープが何本も貼ってあるんですね。
「これ、何ですか?」
そう尋ねましたら、日本人の工場長さんが教えてくださったんです。
「このビニールテープから向こうのビニールテープまでを6秒で歩くことになっています」
そう言うと、壁紙に向かって指をさしながら、「ほら、あれ」と言われました。
そこには中国語でこう書かれていました。
「6秒で歩きなさい」
それで、工場長さんが教えてくださったんです。
「日本の工場だと、こんなことやらないんですけどね。
日本人って廊下を歩きなさいって教えられてるじゃないですか?
でもね、中国だと歩きなさいって言ってもみんな走るんですよ。
だから、ここを歩くときだけスピードダウンするようにさせてるんです」
ここにも、日本の教育の姿が見えました。
学校のトイレに扉がない!
一方、中国の現地の学校に視察に行ったときのこと。
なんとその学校、トイレの個室に扉がなかったんです。
いわゆるニーハオトイレだったのです。
学校の生徒用ですよ。
実は、僕は3年間の中国滞在中、扉のないトイレに出会うことはありませんでした。
そうそう。
修学旅行に行ったとき、田舎の村で現地の人が使う公衆トイレで見たぐらいです。
だから、なおさら衝撃的でした。
しかも、学校です。
日本の子どもたちの中には、学校で大の方をしないという子もいます。
扉があってもしたがりません。
ですから、「これは大変だろうな」って思いました。
それで、交流会のときに、現地校の先生に尋ねたんです。
「あの…、トイレに扉がないのですが、イタズラとかイジメとか起きないんですか?」
すると、呆気にとられた顔で中国人の先生は答えました。
「なんで、トイレに扉がないと嫌がらせをすることになるの?
生き物ならだれだって用を足すでしょ?
だれでもすることでしょ?
日本人はなぜそんなことを心配するの?」
う〜む…、そうですね…、はい、すいません。
ダウンジャケットにニット帽の先生
で、その学校、教室に暖房もエアコンもありません。
上海は夏は異常に暑く、冬は異常に寒い、そんな街です。
それなのに、冷暖房がないのです。
ですので、冬休みにその学校へ視察に行くとき、僕らは結構な重装備で行くことになります。
それでも1時間もすると、身体の芯から冷えてきます。
ところがです。
エアコンはないんだけど、電子黒板や拡大機などがすべての教室に完備されているのです。
英語の授業などは、上海市で用意したデジタル教科書で、全員が同じレベルの授業を受けられるそう。
それなのに、先生はダウンジャケットにニット帽かぶって授業をしてるんです。
ダウンジャケットにニット帽をかぶったおばちゃんが、電子黒板で授業をしている図を想像してみてください。
けっこう衝撃的です。
日本とは、お金をかけるところが違うわけです。
教育に万能なものはないの
僕にとって、上海という街は、教育というものに対する価値観をガラリと変えてくれた場所でした。
日本とは真逆の価値観で生きていると言っても過言ではありません。
冷暖房はないけれど、電子黒板で授業をする教室。
エアコンと扇風機の快適な環境で、旧来の黒板とチョークを用いて授業を行う教室。
どちらが「良い」とか「悪い」とか、評価したいわけではありません。
どちらも長い時間をかけて培われてきた文化です。
でもね、そんな日本式の教育に息苦しさを感じている子がいる。
それは現実の世界で起こっていることです。
僕らは、自分の見ている視野の中でしか、世界を切り取ることができません。
学校には「こうあるべき」という固定観念があります。
でもね、それは今見えてる世界でのお話。
視点を変えたら、もっと子どもたちは心地よく生きられるのになって思います。
魔法の質問
今、見えている世界の中で、あなたに変えられるものは何ですか?
変えられないものを受け入れたとき、何が始まりそうですか?
あなたは、どう在りたいですか?