思春期の子どもの専門家、榑林(くればやし)です。
学校に執着したり 執拗に学校を攻撃してしまうお母さんがいます。そんなとき、こんな魔法の質問を自分にしています。
「お母さんの抱えている痛みはなんだろう?」
その答えをこの記事では書いています。
お母さんを孤独にしてはいけないよ
あるお母さんのお話です。
お母さんは子育てのことで、かなり悩まれていました。
過干渉であったと思います。
子どもは完全に心を閉ざしていました。
それでもお母さんは、執拗に心をこじ開けようとします。
それはやがて激しい家庭内暴力を生みました。
さらには、完全なる拒絶。
母親をいっさい受け付けなくなりました。
お母さんは口癖のように言うのです。
「私が育てているんです。
学校は何もしてくれないし、あの子も学校に行こうとしない。
私はこんなにがんばっているんです」
そのうちに、ヒステリックな声をあげて電話口で叫ぶようになってしまいました。
大きなお家ではありません。
きっとその子は部屋の中で聞いている。
そう思えば胸が痛い。
そんなある日。
子どもの様子を尋ねる僕に、お母さんは怒り出しました。
「先生はいつも子ども。
がんばってるのは私なんです。
あの子は部屋にいるだけ。
何にもしてないんです。
がんばってるのは私なんです。
あの子のことなんてどうでもいいんです」
お母さんの抱える痛み。
僕はそこに寄り添えていなかったのです。
お父さんにも連絡を取り、ご夫婦で学校に来ていただくことになりました。
お母さんは大変不服そうではありましたが、渋々来校いただきました。
直接顔を合わせても、電話と内容は変わりません。
お母さんいつものように感情的になって叫ぶんです。
すると、お父さんはビックリしたような表情を見せる。
そして、お父さんも同じトーンでオウム返しのように叫ぶ。
少し不思議な光景でした。
ですが、お父さんにはお母さんのようなテンションはありません。
無理やり気分を高揚させている感じと言いましょうか。
そこに、とても違和感を感じました。
「無理をされている」という印象でした。
(お父さん、あまり子どもの様子を知らないな)
と感じました。
それから数日後、お母さんは我が子を連れて家を出てしまいました。
後日、お父さんとお話をさせていただきました。
お父さんは静かに口を開きました。
「あの子の部屋でずっと考えていたんです。
だれもいなくなった部屋で、です。
あの子はこの部屋で一人、何を思ってたんだろう?
何を見ていたんだろう?って。
そしたら、涙があふれてきたんですよね。
僕は妻にも子どもにも何もしてあげられなかった。
仕事さえしていれば、それで父親としての役割を果たしていると思っていたんです。
結局、逃げていたんですよね」
そう話す彼の瞳には、うっすら光るものがありました。
「お父さん、これからですよ」
僕は、それ以上伝える言葉をもっていませんでした。
お父さんはね、ただお母さんの話を聴くだけでいいのです。
それが家庭での役割と言っていい。
それだけで子育てはずいぶん変わります。
子育ては夫婦で支え合うもの
学校に執着してしまうお母さんには一つの特徴があります。
それは、とても孤独であるということです。
この場合、配偶者の有無は関係ありません。
シングルの方は、お仕事など外のコミュニティに属している方がほとんどです。
上手に発散されていますし、相談する相手が学校以外にも存在しています。
それよりも、配偶者が居ながらなかなか旦那さんに子育てのことを相談できない、そんなお母さんの方が苦しまれているように感じます。
いわゆる、お父さんがいるのに、「お父さんの影が見えない家庭」と言ってもいいでしょうか。
「子どものことは、お前に任せている」なんて責任をなすりつける男親がいます。それから「子育てとは」と、持論を展開し、お母さんを非難する方もいます。
その在り方は、お母さんを余計に苦しめてしまいます。
我が子と一番向き合っているのは、お母さんです。
お母さんは365日年中無休、24時間営業でお母さんです。
生まれるもっと前からお腹の中で命を育み、寝食を惜しみ我が子を慈しみ育ててきた。
お母さんとは、そのような尊い存在です。愛の人です。
お父さんは、一家の大黒柱などと形容されます。
しかしながら、家庭の大黒柱はお母さんなのです。
このブログでお届けしたいこと
だからね、お父さんは、ただお母さんの話を聴くだけでいいのです。
それが家庭での役割です。
母は子の話を聴き、夫は妻の話を聴く。
「聴」という漢字は、「耳」に「目」と「心」を「+」(足す)と書きます。
目を見て、心も傾けて聴くんですよ。
そうすると、家庭は居心地のよい空間に生まれ変わります。
思春期の子どもが育つプラットフォームはね、そんな居心地のよい空間です。
魔法の質問
- 相手の心を満たすためにできることは何ですか?