「今のままでいい」といってる社員を強制的に異動・転勤させるのは、パワハラじゃなくて部下の成長を願っているポジティブなものだ
単純に仕事のやり方だけでなく、
仕事の意義を確認したり、やりがいや働きがいを求める社員が増えてきた時代。
これまで以上に、管理職は部下のやる気を引き出して成果に結びつけることが 責務となってきているように感じます。
部下に強く言い過ぎるとメンタル疾患になるかも知れないし、
どこまで言っていいのか戸惑ってマネジメントしているリーダーも多いのではないでしょうか。
この記事の目次
「現状維持社員」とどう付き合えばいいのか?
優秀な社員は次々新しいことや難しいことににチャレンジして失敗しつつも、
その経験をいかしてまた次の仕事に立ち向かっていく。
そうでない「現状維持社員」は、
指示された仕事を無難にこなし問題を起こさないように努める。
何か問題があっても、
自分に火の粉がかからないようにかわそうとしたり、
言い訳したりして職場に居続ける。
そんな社員も
管理職にとっては貴重な戦力。
なんとかやる気を引き出したいとおもっていても
肝心の本人が「このままでいい」というスタンスで現状維持を貫こうとする。
そんな人には
いったいどう関わったらいのでしょうか?
危機感がないのが危険
イケてる社員は「今のままじゃだめだ!」と 自らを奮い立たせ次々と行動してくのに対し
イケてない社員は 危機感もなく、現状維持。
危機感を感じない社員だけだったら
その組織や会社はもしかすると転落してしまうかもしれません。
無印良品で有名な良品計画会長の松井忠三は経験からこう語っています。(1)
業績が好調なその時期、ホームセンターのニトリや100円ショップのダイソーは、無印良品の商品を買い込んで、あれこれ研究していました。そして、同じ商品を三割安く仕上げて売るような企業努力をしていたのです。
ところが、無印良品にはまったく危機感はなく、それまでのやり方を変えようとしませんでした。
当時、取引先のほうが危機感を抱き、「ニトリさんでこういつ商品が売れているから、無印さんでもつくったらどうですか」と提案してくれたこともあったようです。それを聞いて担当者はありがたがるどころか、「無印は今のままでも売れているのだから、このままでいいんです」と一蹴する始末。社内には、おごり・慢心が蔓延していたのです。
「いまのままがいい」と 思い込むことの一番怖いのは
本人が気がつかないというところかもしれませんね。
「危機感・不安」は生き残るためのサイン
危険感や不安感は悪いもの、避けたいもの、
できればなくしたいものととらえがちです。
しかし、
ポジティブ心理学のコーチングの第一人者でありロバート・ビスワス=ディーナーは
自身の著書「勇気の科学」で新しい視点でこう語っています。(2)
よちよち歩きの子どもが、一人で玄関を抜けて路上に出てしまったり、何でも手当たり次第に口にいれようとしたりするのを見るとき、私たちは恐怖の欠如が、大きな危険を招くものだということを理解します。
恐怖が強い不快な感情を伴うのは、そのことによって、私たちの目の前の問題や警戒すべきことを教えようとしているからなのです。適度な恐怖は私たちにとって必要です。恐怖は私たちを注意深くし、臨戦体制をとるように仕向けてくれるのです。
つまり、「危機感や不安」は
よりよい未来を引き寄せるときの大切なサインといえます。
危機感や不安は人を成長させる
私の身の回りのいろんな人に 「どんなときが一番成長しましたか?」と聞くと、
明るくこんな風に語る人が多いです。
・急な異動で右も左も分からなかったけど、がむしゃらに頑張ったとき
・大きな仕事を上司から任されて、できるかどうか不安だったけど無事やりとげたとき
大きな仕事や新しい仕事をする直前は不安に駆られたりしていたはずです。
しかし、振り返ってみると「あの経験はよかった」と口をそろえて話す人が多いです。
あなた自身やあなたの身の回りの人はどうですか?
同じように経験談を語ってくれる人はいるのではないでしょうか?
ここから見えてくるのは、
危機感や不安を取り払おうと頑張って乗り越えようとするプロセスが 成長している瞬間と言えそうです。
スキルと難易度がもたらす感情
自分のスキルと仕事の難易度の関係によってもたらす感情を
「フロー理論」という概念で紹介したいと思います。(3)
自分のスキルレベルを横軸
目の前の仕事の難易度を縦軸として
スキルよりも仕事の難易度が高ければ不安になり
スキルよりも仕事の難易度が低ければ安心・幸福になります。
自分のスキルよりも難易度の低い仕事ばかりやっていたら、
常に安心・幸福のなかに居続けることはできますが、
自分のスキルレベルはあがりません。
自分のスキルを上げるには
それ以上の難易度にチャレンジしなければなりません。
ただしそれには「不安」が付きまとうようです。
人は自分から危機感や不安に飛び込もうとはしない
バンジージャンプに喜んで飛び込んでいく人はなかなかいません。
たいていは尻込み込みします。
初めての体験ならなおのこと、飛び込もうとはしません。
何度かバンジージャンプを経験していて、 その楽しさを知っている人なら、
喜んで飛び込んでいきます。
仕事も同じで 「不安に飛び込んだら成長した経験」を何度も繰り返している人は、
また不安に飛び込んでいって、
どんどん成長していきます。
こうなってくるともう「不安」には感じていないのかもしれませんね
初めて自分から飛び込んだ経験のない人は
なかなか一歩踏み出せない
だから最初は誰かに背中を押してもらうことも 必要なのではないでしょうか
人が変わるには3つしかない
では、目の前の「今のままでいい」と言って、変わろうとしない部下に何をしたらいいのでしょう?
経営コンサルタントとして有名な大前研一さんの名言で、
人間が変わる方法は3つしかない。
1番目は時間配分を変える。
2番目は住む場所を変える。
3番目はつきあう人を変える。この3つの要素でしか人間は変わらない。
最も無意味なのは『決意を新たにする』ことだ。
と言うものがあります。
難しい仕事や新しい仕事を部下に与えてみる
というのも一つの方法ですが、
人は環境の変化でガラッと 生活のリズム、住居、周りにいる人たちすべて同時に
変化するのではないでしょうか。
私の友人に何人か急な転勤や異動を命じられた人がいました。
当時はいやだなーとか、会社辞めちゃおうかなと言っていましたが
振り返ってみると
「語学の勉強を必死でやってよかった!」「いい経験ができた」と
自分自身の成長のターニングポイントとして語る人は多いです。
「挑戦」にセットで必要なもの
「転勤してこい!」「あの部署に行け!」と命令したのでは
不安感をあおるだけで
ただの放置や部下育成を放棄したととらえられてしまいます。
次々チャレンジしていく会社で 「働きがいのある職場」にもランキングしている、
アメブロで有名なサイバーエージェントでは
ジギョつく、ジョブつくなど新しい事業を作ったりする 「挑戦」するもの。
頑張る機会を提供すると同時に 懇親会費補助や、会社近くに住む人に住宅手当てを支給したりして、
「安心感」を提供しています。
「挑戦」と「安心」はセットで! ということを意識して会社制度を設計しているようです。(4)
成長には不安がつきもの、挑戦と安心はセットで
成長し続ける第一歩は不安に飛び込むこと。
もし目の前の人が不安に飛び込めずに尻込みしているのなか 愛情をもって押してあげることが重要なのかもしれませんね。
魔法の質問
どのように背中を押しますか?
◆記事を必要な方にお知らせください。
部下の育成に悩んでいる。
いっても変わらないとあきらめている。
そんな管理職の方
もしくは、自身がこれから転職や転勤を考えている人への
応援メッセージとしてこの記事をシェアしていただけると嬉しいです。
◆引用
(1)無印良品は仕組みが9割 www.amazon.co.jp/dp/4041104998
(2)勇気の科学 www.amazon.co.jp/dp/4479794212
(3)フロー理論 www.amazon.co.jp/dp/4790706141
(4)サイバーエージェント成長するしかけ www.amazon.co.jp/dp/4534046790